Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 郷は、過去の慧弥たちとやり取りした内容を思い返しながら、ふと先日逮捕された黎奈の顔を思い出した。

 自分たちとは別に、あちらの世界に干渉していた“X”——それが黎奈だったのだと、郷は確信した。

【それじゃあ、あとは】
【手はずどおりに】

 突如浮かび上がった慧弥の思考に、郷は慌てて「待ってください!」と声を上げた。

「最後に、ひとつだけ教えてください」

【……うん?】

 郷の隣で見守っていた駈が、不安げに郷の横顔を窺う。

「慧弥さんが……どれほど姉を想っているのかは、よく理解しています。でも、過去の世界線に生きる慧弥さんと……“魂を統合する”なんて——そんな酔狂な考え、慧弥さんらしくありません」

 郷の言葉には迷いがあった。慧弥がそこまでして過去に干渉する理由——その真意が、どうしても知りたかった。

【………】

 液晶パネルは、無機質な沈黙を示す。

 やがて、ゆっくりと言葉が浮かび上がった。

【これは、あくまで】

【死者の戯言として】

【聞き流してほしい】

 郷と駈がそのテキストを読み取り、ごくりと息を呑んだ。


 ——全ては【解呪のため】だと慧弥は語った。

 物理的な死が訪れるよりも前に、慧弥は自らの最期を予感していた。
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