Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 それは、ある日突然始まった。

 夢の中で、何度も、何度も、自分の死を繰り返し見るようになったのだ。

 最初はただの悪夢だと思い、気にも留めなかった。だが、その夢は何度も繰り返され、そのたびに左手の甲が疼いた。

 ——慧弥の左手の甲には、生まれつき鳥のような痣がある。

 それは、彼の魂に刻まれた“呪い”の証だった。

 この痣を持つ者は、生涯のうちに必ず惹かれ合う運命の女性と巡り合う。けれど、その結末は幸福ではない。

 互いに強く惹かれ合いながらも、決して結ばれることはなく——。

 どちらかが先に非業の死を遂げる。

 それが、慧弥が生まれるよりも何世紀も昔から続いている宿命なのだという。

 浅倉想乃として転生する前、彼女の魂は慧弥の母、並樹雅だった。

「……呪い?」

 郷は思わず声を漏らした。にわかには信じられなかった。

【ただこれは、死期が近づいて初めて覚醒する】
【そして次に転生したとしても、歳の差は膨大】
【だから——逢いに行くんだよ】

 慧弥の思念が、液晶パネルに浮かび上がる。そこには、確かな執念が滲んでいた。

 郷は、息を呑んだ。

 慧弥の恋は、たとえ時空を超えてでも成就させるべきものなのか。

 それとも、決して交わるべきではないものなのか。

 郷には、判断がつかなかった。
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