Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 ——ガラス越しに見える慧弥の身体が、一瞬、微かにブレる。

 まるで二重に存在しているかのように。

「……行った、のか?」

 郷が呟くと同時に、モニターの慧弥の脳波が急激に低下した。

「脳波減衰……意識活動、ほぼゼロ」

 駈が声を絞り出す。

 次の瞬間——

《WARNING :生命維持活動の異常を検知》
《対象の脳波が消失しました》

 アラートがけたたましく鳴り響く。

 駈は息を呑み、すぐに生命維持装置の診断を確認した。

「脳波が完全に停止……でも、心拍はまだ残ってます、これは……」
「いや、待て……」

 郷が固唾を呑む中、慧弥の心拍数がゆっくりと——しかし確実に落ちていく。

 48bpm——37bpm——26bpm………

「……もう、戻ってこない」

 郷の声はかすれていた。

 彼は静かにモニターを見つめる。

 無意識に、拳を強く握りしめていた。

 そして——

 最後の心拍が響く。

 ——音は、止んだ。

 沈黙が支配する室内。

 生命維持ポッドのモニターには、一本の平坦な線が映し出されている。

 郷は、切なげに眉を寄せる。

 駈は小さく息を吐きながら、ふと呟いた。

「転送は……成功したのでしょうか?」

 誰にともなく放たれた言葉は、静寂の中に溶けていった。

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