Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
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不意に視界がぐにゃりと歪んだ。
一瞬、すべての音が消え、まるで深い闇に引きずり込まれるような感覚に陥る。
まばたきしたのか、それとも一瞬だけ意識を失ったのか——判断がつかないまま、慧弥は軽く頭を振った。
「慧弥さん、大丈夫ですか?」
急によろめいた彼を見て、想乃が慌てて身を寄せる。心配そうに覗き込む、可憐で色白の顔。潤んだ瞳と目が合った瞬間、全身に熱が駆け巡った。
「……想乃」
これまでに何度も口にしてきたはずの名前を呟いた途端、胸の奥が熱くなる。息が詰まるほどの高揚が身体を満たし、指先がかすかに震えた。
想乃の頬に、思わず手を伸ばす。滑らかな肌にそっと触れ、親指でふわりと撫でた。
彼女は目を瞬かせ、頬をほんのりと染める。
——会いたかった。触れたかった。
そんな思考が浮かぶよりも早く、身体が動いた。
切なげに眉を寄せ、そのまま想乃を抱きしめる。
「ちょっ、ちょっと、慧弥さん!」
想乃が慌てて身じろぎした。慧弥の胸を押しやり、真っ赤な顔で周囲を見渡す。瞳を泳がせ、動揺を露わにする彼女の姿がようやく視界に映った。
その瞬間、今どこにいるのかを理解する。