Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 すぐそばには木製のベビーベッドが置かれ、淡い色を基調とした小さな洋服が何着もハンガーにかかっていた。棚には、小さなマネキンが愛らしい服を身につけて並んでいる。

 百貨店のベビー用品売り場。

 そして、想乃の言葉が耳に入る。

「ていうか、慧弥さん。さっきの話、ちゃんと聞いてました?」

 赤ら顔で頬を膨らませ、そっぽを向く彼女。

「……え?」

 自分の口から間抜けな声が漏れた。

「お母さんの意識レベルの回復、順調みたいで。視線の追従とか、簡単なやり取りで発話したりもできるようになってるって」

 そう言いながら、想乃の顔が自然と綻ぶ。棚に並んだ小さなベビーシューズを手に取り、ふふっと嬉しそうに笑った。

「だからね?」

 彼女が振り返り、慧弥を見上げる。

「明日にでも、一緒にお見舞いに行ってほしいの。慧弥さんのこと、改めてお母さんに紹介したい」
「うん、いいよ。もちろん」

 慧弥は想乃の隣に立ち、「こっちの色味のほうがいいんじゃない?」と別のシューズを手に取る。

「うーん……青色は男の子っぽいイメージじゃないですか? 最初は無難に黄色にしたほうが」
「え、なんで? 性別、男の子じゃなかったっけ?」
「……え?」

 想乃が顔を上げ、きょとんとする。
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