Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 鉄板の上で綺麗に焼けた肉がじゅうじゅうと音を立てている。傍に添えられた人参やカボチャ、ブロッコリーが目に鮮やかで想乃の瞳がきらきらと輝いた。

 うわぁ。美味しそう……!

 視覚と嗅覚がはたらき、一瞬で口内によだれが溜まった。

「それじゃあいただこうか?」

 並樹からカトラリーを渡され、想乃は「いただきます」と手を合わせた。右手に持ったナイフと左手のフォークを見つめ、向かいに座る並樹をチラッと盗み見る。使い方を知らないわけではないが、見よう見まねに左端から順に切り、ひと口目を口に運んだ。

 うわ。なにこれ。

 想乃は目を丸くして肉の旨味を存分に味わった。少し噛んだだけでじわぁ、と溶けていく。まるで口いっぱいに幸せが膨らむようで美味しい以外の語彙が見つからない。

「ははっ、いい反応」

 目の前の並樹に笑みを向けられて、想乃は口元に手を添えた。好きな人に肉を食べる姿を見られるのはやはり恥ずかしい。

 想乃は無言で食事を進めながら、ちらちらと並樹に視線を飛ばした。彼の食べっぷりは良く、手前に並んだ三皿を綺麗に食べ終えていた。「ご馳走様でした」と言って水を飲み、食後のコーヒーを勧められる。
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