〜Midnight Eden〜 episode1.【春雷】
第一の被害者、初瀬明日美は顔馴染みが偶然通りかかったという理由だけで殺人の練習台で殺された。
第二の被害者、前田絵茉が陣内のメインであり、第三の被害者、岡部千尋で彼はさらに飢えた殺人衝動を満たした。
絵茉の自宅の住所は元担任であった陣内にはいくらでも知りようがある。教師の立場を利用して絵茉の住所を入手した彼は、何夜にも渡って絵茉の自宅付近で彼女を待ち伏せていた。
21世紀の切り裂きジャックへ注がれる賛美の雨が陣内の内に潜む狂気の種を育てていく。そうして何度目かの夜に、殺したい女を殺した陣内の殺人への執念は異常だった。
陣内が使用する北校舎三階の生物準備室からは日暮里南公園がよく見える。日暮里南公園や最寄りの鶯谷《うぐいすだに》駅で千尋を見かけていた陳内は、彼女が以前に自分を接客したデリヘル嬢だと気付き、三番目のターゲットを千尋に定めた。
千尋の出勤状況をデリヘル店のサイトで確認し、派遣社員とデリヘルの副業を掛け持ちする千尋の生活時間帯を完全に把握していた。
派遣の仕事を終えた千尋の帰宅時間帯に千尋と同じ車両に乗り合わせた彼は、綾瀬駅で下車する千尋を尾行して彼女の家を突き止めた。
その日に殺そうと思えば殺せたのに、陣内はまだ千尋を生かしていた。
絵茉の時と同じく何日も闇に紛れて、切り裂きジャックは獲物の登場を息を殺して待ち構えた。そのスリルが何よりも彼を興奮させていた。
そこまでの用意周到さで犯行を重ねていた陣内の最後の殺人のターゲット選びは、いささか雑な印象を受ける。
初めて利用した人妻専門のデリヘル店で佳世を指名した理由も、見た目が好みとしか陣内は語らなかった。
「陣内先生の家に行ったことはある?」
「ありません」
先週金曜の夕刻、陣内の自宅がある葛飾区亀有付近で荒川第一高校の制服を着た女子生徒と、自転車を引いた陣内らしき男が一緒に歩いている姿を見かけたと証言がある。
荒川第一高校には葛飾区在住の女子生徒が数十名いるが、どの生徒も陳内との接点は生物の授業のみ。
授業以外で陳内と交流があった生徒は紺野萌子だけ。しかし取り調べでも、連れ歩いていた女生徒の話題になると陳内は黙秘を貫いている。
『もういいですか? 娘は二度も母親を亡くして傷付いているんです。私も妻のあんな辱《はずか》しめの動画が世間に流れて、これからどうやって生きていけばいいのかわからないんだ』
見かねた父親に追い立てられて萌子への聴取は強制的に終了となり、二人は紺野邸を辞した。
第二の被害者、前田絵茉が陣内のメインであり、第三の被害者、岡部千尋で彼はさらに飢えた殺人衝動を満たした。
絵茉の自宅の住所は元担任であった陣内にはいくらでも知りようがある。教師の立場を利用して絵茉の住所を入手した彼は、何夜にも渡って絵茉の自宅付近で彼女を待ち伏せていた。
21世紀の切り裂きジャックへ注がれる賛美の雨が陣内の内に潜む狂気の種を育てていく。そうして何度目かの夜に、殺したい女を殺した陣内の殺人への執念は異常だった。
陣内が使用する北校舎三階の生物準備室からは日暮里南公園がよく見える。日暮里南公園や最寄りの鶯谷《うぐいすだに》駅で千尋を見かけていた陳内は、彼女が以前に自分を接客したデリヘル嬢だと気付き、三番目のターゲットを千尋に定めた。
千尋の出勤状況をデリヘル店のサイトで確認し、派遣社員とデリヘルの副業を掛け持ちする千尋の生活時間帯を完全に把握していた。
派遣の仕事を終えた千尋の帰宅時間帯に千尋と同じ車両に乗り合わせた彼は、綾瀬駅で下車する千尋を尾行して彼女の家を突き止めた。
その日に殺そうと思えば殺せたのに、陣内はまだ千尋を生かしていた。
絵茉の時と同じく何日も闇に紛れて、切り裂きジャックは獲物の登場を息を殺して待ち構えた。そのスリルが何よりも彼を興奮させていた。
そこまでの用意周到さで犯行を重ねていた陣内の最後の殺人のターゲット選びは、いささか雑な印象を受ける。
初めて利用した人妻専門のデリヘル店で佳世を指名した理由も、見た目が好みとしか陣内は語らなかった。
「陣内先生の家に行ったことはある?」
「ありません」
先週金曜の夕刻、陣内の自宅がある葛飾区亀有付近で荒川第一高校の制服を着た女子生徒と、自転車を引いた陣内らしき男が一緒に歩いている姿を見かけたと証言がある。
荒川第一高校には葛飾区在住の女子生徒が数十名いるが、どの生徒も陳内との接点は生物の授業のみ。
授業以外で陳内と交流があった生徒は紺野萌子だけ。しかし取り調べでも、連れ歩いていた女生徒の話題になると陳内は黙秘を貫いている。
『もういいですか? 娘は二度も母親を亡くして傷付いているんです。私も妻のあんな辱《はずか》しめの動画が世間に流れて、これからどうやって生きていけばいいのかわからないんだ』
見かねた父親に追い立てられて萌子への聴取は強制的に終了となり、二人は紺野邸を辞した。