重ねる涙の先で仕合せは紡ぐ。

巡はふと立ち上がると、窓の方へ向かい、カーテンの隙間から外の様子を窺った。

そして、「そろそろ諦めて帰ったか?」と山内くんが見当たらないことを確認していた。

「家まで送っててやるから、そろそろ行くぞ。」
「うん、ありがとう。」
「あ、その前に。」

そう言うと、巡はパソコンデスクに置いてあったスマホを手に取った。

「一応、LINE教えとく。何かあったら連絡して来い。」

巡はそう言いながら、スマホをわたしに向けて差し出し、画面にはQRコードが表示されていた。

わたしは慌ててスマホをポケットから取り出すと、巡のQRコードを読み取った。

すると、"涙"という名前が友だち追加になった。

「なみだ?」

わたしがそう言うと、巡は「"るい"って読むんだよ。俺の仕事上の名前だ。」と言った。

「ほら、行くぞ。」
「あ、うん。」

わたしは巡とLINE交換をすると、巡に家まで送ってもらった。

帰り道の途中では、巡の日常について話を聞いた。

普段は本業の曲作りをしている為、家に缶詰め状態らしい。

そして、たまに気分転換に写真を撮りに外に出たり、缶珈琲を買いに緑丘公園の側にある自販機まで行くと言っていた。

「今日はありがとね。巡って、意外と優しいんだね。」

わたしがそう言うと、巡は「意外とじゃなくて、優しいんだよ。じゃあな。」と言い、パーカーのポケットに手を突っ込みながら帰って行った。

「おやすみ!」

わたしが帰って行く巡の後ろ姿に向かって言うと、巡は振り向かないまま手を上げて手をヒラヒラとさせ応えてくれた。

< 15 / 50 >

この作品をシェア

pagetop