龍神島の花嫁綺譚

「紫苑、紫苑っ……!」

 そこへ、水色の着物の女が慌てた様子で飛び込んできた。

「みんな、紫苑を見なかった?」
「紫苑様?」
「紫苑様……!」
「蒼樹様が先ほど、お部屋に連れて行かれましたよ」

 女の問いかけに、あやかし三人組が口々に反応する。

「そう、よかった。ありがとう」

 女がほっと胸を撫で下ろしたその瞬間、陽葉は「あ!」と思わず声をあげた。

志津姉(しづねえ)……?」

 陽葉の呼びかけに、振り向いた女がわずかに眉を寄せる。

 切れ長の一重で、凛とした雰囲気の美人。

 間違いない。彼女は海の村の『天女の郷』で暮らしていた志津だ。幼い頃によく面倒をみてくれて、陽葉も実の姉のように慕っていた。

 でも十年前、左手首に天女花の痣が浮かび、五頭龍の花嫁として島に送られていった。
< 35 / 54 >

この作品をシェア

pagetop