この恋、延長可能ですか?


「志麻さんってさ、なんではっきり言わないの?」

この美しい後輩ときたら、わたしの抗議を嘲笑うかのように、口端をゆるく持ち上げて近寄るから、ビクッと肩が震えた。

そんなの……自分でも言いたいに決まってる……。

言いたくても言えないんだ。言いたい言葉が喉に詰まって、出ていこうとしない。

言って、傷つけて、やっぱり言わなきゃ良かったって思うくらいなら、最初から言わない方が自分の心が楽だ。

「え……、と……その……」

ぎゅっと身を縮こめて見上げた。視界が揺れているから、目に涙がたまっていることはわかっていた。

「期日が過ぎてることくらいわかってますよ。でも駄目とも嫌とも言わないし。そんなんだから後輩にも舐められるんじゃないですか」

「……え、」

「出来るの、出来ないの、どっち」

「…………が、がんばれば、できます…………」

「じゃあ、頑張って下さい」

わたしの反応、その全てを仮面の笑顔で呑み込んだ雨宮くんは、書類をデスクに置いてオフィスをあとにした。

な、なんなの、あのひと……!!

舐められるまえに、既に、舐められていたらしい。

苦手な人からむかつく人に昇進、と。脳内でメモとして残す。

人生イージーモードで生きているであろう、雨宮くんであればわたしの悩みなんて瞬きひとつの出来事かもしれない。いや、瞬きする必要さえない気がする。

はあ、とため息を落として、先程貰った資料片手にパソコンを立ち上げる。


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