この恋、延長可能ですか?
先程雨宮くんから渡された資料を捲る。営業1課なのに珍しく記入漏れもないし、男の人のものと思えないほど丁寧な字。完璧な請求書だった。

しかし、先程のニヒルな笑顔を思い出せば、異様にむしゃくしゃした。

この会社は営業事務という明確なポジションがないので、事務は営業のサポート役のようなものだ。作成する書類の量も営業宛が1番多い。

営業は事務とはまた違ったスキルが必要だし、仕事内容もまるっきり違う。営業や企画が仕事を取ってきてくれるから成り立っている部分もあるじゃないの。

耐えよう、志麻日和。人生は忍耐だ。

あれくらいの揶揄も受け流さないと、社会でやっていけないのは承知しているでしょう?年下だろうが舐められてしまうのは致し方のないことだ。

キラキラ男子だからって、全員がみな心が広いわけじゃない。雨宮くん、伊達さんとも負けず劣らずの定時人間らしいし、有給消化率もナンバーワン。仕事に対する熱量も冷めてるんでしょ。うん。

こころの中でしっかりと強がって、帰宅の準備をするとタイムカードを通した。

スマホが震えたのは、エントランスのゲートを越える時だった。


《初めまして。ご指名ありがとうございます、ミツです》


うわあああ、本当に、きた……!!!

感動で、どきんと高鳴る心臓。思わずごくりと固唾を飲んだ。


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