Dearest 1st 〜Dream〜
「……切ないねぇ…」
大袈裟に腕で涙を拭う素振りをした吾郎を、俺は横目でチラリと見つめた。
「……分かってるよ。
でも、もう決めた事やから。」
……片思いにも辛さの階級があるんだな。
相手に、既に好きな奴がいる片思いほど辛いもんはない。
でも全部、承知の上。
俺が彩を全身全霊かけて守ってやる。
二言は無し。
決めた誓いはもう簡単には曲げない。
一生、彩の味方でいると決めた。
それに───…
「──もしかしたら、
奇跡が起こるかもしれへんやろ?」
……三人は、優しく笑った。
『奇跡が起きるといいね』、と。
たとえ彩の思いがぶんに確定していようとも、
俺の未来は自分で決めて変えていける。
そばにいることが意味を持ち、それがやがて“芽”となったら?
──…そんな有り得ない奇跡を信じてみたい。
そんな優しい未来を想像して、願っていたい。
たとえ1%に満たなくても、俺はその確率にすがるしかない。
───まだ簡単に離れられないのだから。