Dearest 1st 〜Dream〜
「そんな事させませんから。
……絶対に。」
そう言い切ったぶんの瞳には怒りの炎が揺れていた。
「──…へぇ…?」
「近いうちに、彩に気持ちを伝えます。
あなたみたいな人間から、守ってみせますから。
───絶対に。」
そう言うと、ぶんは準備室から去っていった。
「……………」
震える手を、もう片方の手でギュッと押さえた。
「──…は……」
唇から零れる声を、
更に強くその手で押さえつけた。
…………彩。
俺にはこんな方法しか思いつかなかった。
彩がぶんを思っていて、
ぶんも彩を思っていて、
……そんな立派な方程式に俺はいらない。
なら……
役立たずな俺が最後に君に出来る事はただ一つ。
──ぶんを煽る事。
そうすれば、より一層彩に気持ちが高まると憶測した俺はわざとぶんを煽った。
現に、もう今の煽りでぶんは彩に告白する秒読みだ。
「────…」
……これで、良かったんだ。
良かったんだよ。
これで、彩が最高の笑顔で笑ってくれる。
約束、しただろ?
君を守ると。
一番の味方でいると。
背中を押すと──…。
……大丈夫だよ、彩。
もう泣かなくていい。
きっともうすぐ笑える。
願いが通じる時が来るから──…。