Dearest 1st 〜Dream〜
「──にしても隼人も懲りないよなぁ……」
時間が少し経過して、
ここは居酒屋の中。
吾郎がビールを片手に呆れたようにそう言って笑った。
ライブ後のお決まりの打ち上げ兼飲み会で、俺達はアルコールを浴びるように飲みまくっていた。
何を隠そう、紅のメンバー全員が酒に強いもんだから、ライブ後は特に飲む量がハンパない。
「マリアに対する隼人のあのビビりようには笑ったな」
俺も俺でビール片手に陽気に笑って言えば、マリアもフッと笑みを零す。
「…あたしを狙うなんて、何百光年早いわよ」
「うはー!超こえー!」
マリアに向かって壱がそう吠えれば、キッと睨みを効かされ壱は尻尾を曲げる。
俺が笑って枝豆を手に取ると、
「──でも、隼人じゃないけどさ。
純は新しい恋は考えないのか?」
吾郎にそう言われ、俺はピタリと手を止めた。
「………んー?」
そう誤魔化すのが精一杯だった。
正直な話、隼人のように女に走って忘れられたらどんなにラクかと思う。
でも、昔俺はそんな事を繰り返して痛い程分かっていた。
そんな事をしてもただ虚しさに襲われるだけ。
ただ一時の快楽にしか過ぎないだけ。
根本的には、きっと寂しさを埋められない。
それは女嫌いを克服しようとして、バカな事を繰り返した俺の唯一の教訓だった。
忘れたいんじゃない。
忘れたくない訳でもない。
もう忘れられない域に達していた。
「…………」
こんな息を忘れるような辛い思いをしたのも初めてで。
歌ってもダメ、
アルコールに頼ってもダメ、
──…そんな中、
マジでどう対処したらいいのかなんて検討も付かないままだった。