Dearest 1st 〜Dream〜
「………っ」
ふと抱き締めていた彩を離すと、彩も涙を堪えながら泣いていた。
「何で彩が泣くねん…
泣きたいのはこっちやって」
「…ごっ…ごめん…」
………いいよ。
全く……
俺は本当に、最後まで君には弱いみたいだ。
俺はふっと笑ってまた彩を抱き締めた。
───忘れないよ。
忘れない。
「……すっきりした。
──ありがとう…」
君の笑顔も、
君の泣き顔も、
君の涙も、
君の優しさも、
君の香りも、
全て──………。
俺の記憶に刻みつけて離してなんかやらない。
思えば、
泡沫のような、一瞬にして消え失せそうな儚い恋だった。
だけど諦める事はおろか、譲れないものばかりだった。
今日までの“好きだ”を
明日からは“好きだった”に変える。
胸を張ってこの恋を誇りに出来る。
──…好きだった。
好きだったよ。
きっと忘れる事なんて出来ないだろう。
永遠にこの胸に咲き誇ったまま止まないだろう。
だから桜の花と共に、花葬しようか。
──この、散りゆく恋を。
「──…彩。」
「ん…?」
「桜の花言葉、知ってる?」
俺は、ハラハラと散る桜吹雪を見上げながら彩に尋ねた。
「……知らない……」
「──…日本では教養とかいう意味やけど、フランスとかではさ?」
「……うん」
「──“私を忘れないで”……って言うんやって……。」
「…………」
忘れないで。
忘れたりなんかしないで。
君を、
確かに一番に想ってた事。
傍で一番に見ていた事。
どうか忘れないで──…。