Dearest 1st 〜Dream〜




「………っ」





ふと抱き締めていた彩を離すと、彩も涙を堪えながら泣いていた。





「何で彩が泣くねん…

泣きたいのはこっちやって」




「…ごっ…ごめん…」






………いいよ。





全く……




俺は本当に、最後まで君には弱いみたいだ。





俺はふっと笑ってまた彩を抱き締めた。






───忘れないよ。





忘れない。






「……すっきりした。



──ありがとう…」







君の笑顔も、




君の泣き顔も、




君の涙も、




君の優しさも、




君の香りも、





全て──………。






俺の記憶に刻みつけて離してなんかやらない。






思えば、




泡沫のような、一瞬にして消え失せそうな儚い恋だった。





だけど諦める事はおろか、譲れないものばかりだった。






今日までの“好きだ”を

明日からは“好きだった”に変える。






胸を張ってこの恋を誇りに出来る。






──…好きだった。






好きだったよ。






きっと忘れる事なんて出来ないだろう。





永遠にこの胸に咲き誇ったまま止まないだろう。





だから桜の花と共に、花葬しようか。






──この、散りゆく恋を。






「──…彩。」





「ん…?」





「桜の花言葉、知ってる?」





俺は、ハラハラと散る桜吹雪を見上げながら彩に尋ねた。






「……知らない……」






「──…日本では教養とかいう意味やけど、フランスとかではさ?」





「……うん」






「──“私を忘れないで”……って言うんやって……。」






「…………」













忘れないで。





忘れたりなんかしないで。






君を、




確かに一番に想ってた事。





傍で一番に見ていた事。






どうか忘れないで──…。


< 280 / 402 >

この作品をシェア

pagetop