Dearest 1st 〜Dream〜
彩の荷物を持ちながら、
俺はぶつけようがない怒りを抑えるのに必死だった。
さっきの男といい、簡単に女を殴る奴の気が知れない。
──『男っていうのはね、殴る為に力があるんじゃない。
大事な物を守る為に力があるの。
だから、純。
力がない女の人を殴ったりしちゃ絶対にダメよ。』───
──…昔、お袋が俺に嫌って程言い聞かせてきたっけ…。
俺はそう言われながら育ってきたし、それが当たり前だと思って生きてきた。
力は、壊す為に使うもんじゃない。
自分勝手な理由をムリヤリ肯定する為に使うもんでもない。
自分より弱いものを守る為にあるんだって事──…。
そう……
教えてあげたいのに。
せめて、話してさえくれたら…。
それさえも許されず、
ただこうやって知らんふりするしかない自分にも許せない。
今はこうやって知らない顔をしていれば、いずれ話してくれる時が来るのか?
「──…朝岡さん……」
───キュッ…。
背後からシャツを握る彩の声に、俺は慌てて振り向いた。