副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜
「皆さんお察しの通り、実態の無い架空請求です。ブルー・アイランド社と契約をしたのは水嶋専務、そして業務斡旋のキックバックとして多額のお金を水嶋専務が受け取っています。
先日、トラブル対応で福岡に行った際、内部告発で判明しました。もちろん、誰が告発したかここでは申し上げられませんが……」
「……なんてことを、水嶋専務、横領とは本当なのか?! ホテルの看板に泥を塗ったな!!」
五十嵐常務が怒りを露わにしている。
水嶋専務は証拠が充分ではないと見たのか、まだ完全に認めているようには見えなかった。
「ふん、全て七瀬副社長が勝手に言っていることだ!でっち上げだ!!
自分の婚約者が傷付いた腹いせに、私に当たっているんだろう? それかあれか、社長になるために私が邪魔か?」
「先日私が福岡で事故に遭ったのも、あなたが手を回して、近くに停まっていたバイクのブレーキに細工しましたね?」
「だから!!どこに、そんな証拠があるというのだ!! 証拠をっ 証拠を見せろ!!!」
そう水嶋専務が大声で言い放った時、会議室の扉がバンッと開いた。
ーーーー来たか
そう思って扉の方に目を向ける。
役員陣は「なんだ?誰だ?」とざわざわしている。
「失礼致します」
「おぉ、鬼頭君、来たか。七瀬副社長がおかしなことを言っていて、困っていたんだ」
「水嶋専務、来るのが遅くなり申し訳ございません」
そう言って深々と頭を下げたのは、水嶋専務の秘書であり、非常に優秀な男と噂の「鬼頭 朔太郎」だ。