副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜
「……鬼頭君、そちらのご老人は一体誰だ?」
「こちらのご老人は、以前、当ホテルで働いていた青木さんという方です。水嶋専務はご存知ではないですか?」
「青木?どこの部署だ? レストランかどこかか?」
「青木さんは、17年前の倉田支配人の死亡事故について、水嶋専務が関わっていることを証言しに来られました」
「なんだと!?!」
役員陣からも「え?倉田支配人って交通事故ではなかったのか?」「どういうことだ?」と驚きを隠せない。
「ちなみに、愛人・佳奈子さんとの密会写真や、探偵、システム部への裏取り、そしてそれを副社長に報告したのは私ですよ?」
みんなが「えっ!?!!」と鬼頭に顔を向ける。
鬼頭はニコッとみんなに微笑み返した。
「また、七瀬副社長が事故に遭うよう、手を回していたのも裏が取れています。その辺の浮浪者にお金を渡し、七瀬副社長の会食会場からホテルに向かうまでの道の途中で、一時停止しているバイクに細工をさせていますね。
バイクの運転手は乗り始めてからブレーキがおかしいことに気付き、歩道を歩いてきた七瀬副社長にぶつかりそうになったのを何とか避けた、という訳です!」
手をパンッと叩いて、ニコリと全員に笑顔を向ける。みんなの顔が引き攣っていた。
この男は本当にデキる奴だ。誰もが『敵に回したくない』と思っただろう。
そして、水嶋専務の秘書が退職するタイミングで、鬼頭を秘書候補に紛れ込ませたのは俺だ。そう、水嶋専務の情報は、鬼頭経由で全て筒抜けだったのだ。
「鬼頭っ……貴様、私を騙したな!?!」