高貴な財閥夫婦の秘密
しかし美奈は、諦められずにいた。

ダメだと思えば思うほど、欲求が強くなっていく。


その日の夜。
ベッドで那留に抱かれていた、美奈。

避妊具を取ろうとする那留を、美奈が制した。  

「ん?美奈?」

「“そのまま”シよ?」

「………は?」

「ね?」

「ダメだろ。
“万が一が”あったらどうする?
全部、壊れるぞ?
な?」

「大丈夫。
私……
“薬飲んでるから”」

「………」

「ほんと、大丈夫だって!(笑)
ね?
生の方が、気持ちいいって言うじゃん!」

「………エロっ…!!」

「え?」

「この状況でそんなエロいこと言うなよ、バカ!」

「……/////フフ…」

「……ったく…覚悟しとけよ!」


そして………いつものように那留の腕枕で横になっている、美奈。

頭を撫でている那留の手の動きが、段々ゆっくりになり、パタッと止まった。

見上げると、那留は眠っていた。

那留の前髪に触れ、優しく払う美奈。

「………」

「………」

「………」

「………っ…那留…
ごめんね…
ごめんね…」

段々目が潤んできて、涙が溢れ出す。
そして美奈は、ずっと謝罪の言葉を繰り返していた。

それからも美奈は那留に“薬を飲んでるから”と言い続け、二人は避妊することなくセックスをし続けた。

わかっていた――――――

こんな“嘘”は、後からの悲劇を生むであろうことは。

しかし、抑えられなかった。
友人達への嫉妬と秘密の生活のストレスが、美奈に“なんとかなる”と思わせていた。


そして…………

「………っ…」


当然結果は、妊娠検査薬“陽性”


トイレ内で、確認した美奈。
ゆっくり腹をさすった。

「………」

トイレのドアからノックの音が響く。
「美奈ー、いるー?」

「はっ…
う、うん!」

「じゃあ、行ってくっから〜」

「え……」
慌てて出て「ごめん、どっか行くんだっけ?」と聞く。

「は?
言ったじゃん!
今日は、財閥の忘年会!」

「あ…」
(そ、そうだった…!)

「なるべく早く帰るから」
そう言って美奈の頭をポンポンと撫で、一階に降りようとする那留。

「あ…な、那留!!」

美奈はその後ろ姿に声をかけた。

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