高貴な財閥夫婦の秘密

「ん？」

「あ、あのね……！」

「ん？どうした？
何、寂しいの〜？(笑)」

「あ…あの…」

「すぐ帰ってくっから！な？」

那留は、もう一度美奈の頭をポンポンと撫で、頬にキスをして階段を下りていった。

「………………
話さなきゃ…」
那留達三人に話さないと、とんでもない事になる。

美奈は、那留を追うように階段を駆け下りた。


一階の玄関前では、梨良が知嗣とこの世の別れのように抱き締め合っていた。

「知くん、できる限り早く帰るからね…！」

「うん。
……………那留、頼むね。
今日の梨良は、いつにも増して綺麗だから！」

「うっせぇな！
わかってるっつってんの！！
大丈夫。
溺愛中の旦那を演じるからよ！」

「わかってる」

「…………美奈さん？」
そんな中、ボーッとしている美奈の顔を覗き込んできた梨良。

「え？」

「どうしたの？」
そう言って、美奈に触れようとすると………

「嫌…！！」

パシン―――――！！！

美奈におもいきり、はたかれた。

「え……」

「………」
「………」
「………」
「………」

四人が、固まる。

「………っは！？
ご、ごめんね！！！梨良！！！」
我に返り、美奈が慌てて謝罪する。

「う、ううん…
私こそ、ごめんなさい！
触られたくなかったよね！？
ごめんね！ごめんね！」

梨良も何度も謝罪する。

「美奈、どうしたの？」
「さっきから、お前らしくねぇ……」

知嗣は梨良を抱き寄せ言い、那留も心配そうに顔を覗き込んできた。

「ううん…ちょっと、さ、寂しくて……」

「………」

知嗣と那留は納得してなかったが、迎えの車が来て那留と梨良は車に乗り込んだ。


「………」
(どうしよう……)

三人にさえも話せない。

二階の自身の寝室に戻り、美奈はベッドに横になってうずくまった。
そして………今になって事の重大さに気づいていた。

とんでもない事態を起こしてしまった。

三人にバレないようにおろす？

(…………でも……)

産みたい……！！

この期に及んで、美奈はそんなことを考えていた。


あぁ…私は最初から、全然“覚悟が出来てなかったんだな……”