高貴な財閥夫婦の秘密
那留と梨良。

会場での二人は、かなり注目を浴びていた。
政財界の大物の中を、颯爽と歩いていく。

そして一際目立つ存在感と威厳を持った人物・梨良の父親の所へ向かう。

「パパ〜」
梨良が父親を呼ぶと、こちらを向き微笑んできた。

「お義父さん、ご無沙汰してます」
那留が丁寧に頭を下げる。

「あぁ!
那留、たまには梨良を連れて来てくれよ。
俺ぁ、梨良に会えなくて寂しいんだが!
梨良に言っても“那留くんとの時間を大切にしてる”って言われるしよ!!」

「あぁ(笑)
すみません……!」

さすが梨良の父親なだけあり、モデルのような容姿とスマートな対応で、誰もが見惚れてしまう程だ。

実際、周りの人達の視線を集めている。

「梨良、上手くやっていけてる?」

「うん、大丈夫!」

「…………そう?
だったら良いけど」

「何?」
意味深な父親に、首を傾げる梨良。

「那留と俺の家で一緒に住もうって言ってるだろ?
同居しようよ!
それに、家事もしなくて済むしよ。
那留と長島(ながしま)(梨良の父親の執事兼秘書)に俺の会社は任せて、俺と二人でゆっくり屋敷で過ごそう?」

「やだ!!
四人が良い!!」

「はぁ…相変わらずワガママな姫だな(笑)」
笑いながらため息を漏らし、後ろに控えている長島に言った。

「………」
こう見ると、特に問題ない親子に見える。
むしろ、梨良がワガママを言っているように感じる程だ。

「那留からも言って欲しいんだがな」

「いえ、俺も四人が良いです」

「不倫でもすんの?」

「は?」

「ほら“好きな女が傍にいたら”我慢出来ないもんだろ?
お前等は違うの?」

「…………“俺が好きなのは”梨良ですよ?
それに純粋に俺達は、四人でいたいだけです」

「純粋に…ね……(笑)」

意味深に笑う、父親。


「まぁ、良いよ。
“外にバレなければ”」


「え……」
那留と梨良が固まる。

「フフ…ほんとお前等“ガキ”だなぁ〜」

そう言って後ろ手に手を振り、長島に連れ去っていく。

那留と梨良は、取り残されたようにその場に立ち尽くしていた。

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