今夜君に、七年越しの愛を
リストを見ると奴は...いえ、4702号室の笹崎サマは1日チェックアウトを伸ばしたようだ。
正確には...12時間、...延長。
それにバーのドリンク代も追加精算。
ということは奴は昨晩バーにいたことは確か。
私も本当にいたということだ。
「追加のお支払いに関しまして、こちらでお間違い無いかご確認下さい」
じぃっと顔を見つめ続けられると居心地が悪くて悪くて。
やっと宿帳に目を落としたのでホッとする。
「お支払いはカードで宜しいでしょうか」
「あぁ」と頷き、いかにも感がある財布から取り出された
ぶ、ブラックカード...ッ...
──だめだめ平常心。
みみみ見ルノガ初メテナ訳デハアリマセンモノ。
ササザキヒロトは、只のお客様。
大丈夫、それ以上でもそれ以下でもない。
只のお客様、コメジルシ、たった一晩同じ空間を共有し───
なんかいやらしくなってる?
わーーーー!!!!忘れる!忘れろ!
記憶!から!削除削除!!!
いいやでも何もしてないもの隠すことないし消すことないし、
...なんか自分に墓穴掘った気がする!!!
ていうか今日のはるか、スケベ味がある!!
「ふっ、相変わらずの百面相」
「っ!!」
気づいたら顔を覗き込まれていて、心臓がドグンと鳴った。
は...今日だけで心不全になりそう。
ほんと、これで寿命縮んだら怖いよ。
麦大きくなるまで死ねないよ。
「...この度は当ホテルをご利用頂き有難う御座いました。またのご利用を心よりお待ちしております。では──」
一歩引いて60度のお辞儀。
「お気をつけて行ってらっしゃいませ」
昔に似てるかはわからない、忘れたもん。
その長身の後ろ姿を見送り、同級生は首都の喧騒に紛れた。
そこで唐突に気づく。
やばい。
「お酒代、まさか...私の分まで払って貰った?!!!」
やらかした。
なんか詰みです...いろいろと。

