The previous night of the world revolution3〜L.D.〜

俺の家には、多くの使用人がいた。

俺の父親は、箱庭帝国を統治する憲兵局の上級職員だった。

それも、憲兵局参謀長官という、大将軍の右腕とも呼べる重要な役職に就いていた。

箱庭帝国では、五本の指に入るほどの大物だ。

けれどもそれは決して、父がそれだけ有能だったからではない。

憲兵局の上級職員は、そのほぼ全てが世襲制で続いていた。

どんなに無能だろうと、父親が上級職員であれば、その子も同じく上級職員になれた。

逆に言えばどんなに有能でも、一代で上級職員にまで上り詰めるのは、不可能ではないが、しかし非常に困難だった。

さて、そんな父を持つ俺の自宅は、箱庭帝国でも有数の大邸宅であった。

国内の大多数が、一部屋か二部屋くらいしかない小さなあばら屋に住んでいたというのに…俺は幼い頃、そんなことにさえ気づいていなかった。

顔も覚えられないくらい多くの使用人。迷子になりそうなほど広い邸宅。俺はそれを、当たり前のものと思っていた。

…彼女に会うまでは。



彼女は…俺の自宅に勤める使用人の一人であった。