The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
「殺すな、ね…。ルレイアの知り合いだったのかな?」

「…分からない」

仕事柄、普段から恨みはめちゃくちゃ買ってると思うけど。

「あのルレイアを怪我させられるんだから…相当強いぞ」

「…だね」

俺だって、ルレイアから一本取るのはきついのに。

マフィアの中でも、ルレイアの相手をまともに出来る人間は限られている。

俺とシュノくらいか。遠距離戦ならアリューシャは負けなしだが、近接戦闘には向かないし…アイズの持ち味も情報戦であって、直接戦闘ではないし。

それに、俺もシュノも…ルレイアの相手をしようと思えば出来るけど、でも…勝てと言われたら、それは無理だ。

少なくとも、正攻法ではまず無理。

ルレイアの戦闘能力は、『青薔薇連合会』でも随一なのだ。そのルレイアと一対一で戦って、一方的に傷を負わせられるなんて。

…正直、勝てる気がしない。

オルタンスレベルじゃないか?それって。

「まぁ…ルレイアも死神モードじゃなかったんだろうから…。その点与し易かったのかもしれないけどね」

「…そうだな」

暗殺者の素性は知らないが、ルレイアと戦って勝てたのは、ルレイアが死神モードじゃなかったからだ。

それでも…それでもルレイアは充分強いはずだ。それなのに…。

「…何でルレイアは、殺すな、って言ったんだろうね」

「それだけ強い相手だから…?私達が返り討ちに遭っちゃいけないと思って…」

それは確かに、少しはあると思う。

並みの相手じゃない。不用意に近づくのは危険過ぎる。

でも多分…それだけじゃないと思うのだ。

「ルレ公のことだからな~…。案外下らねぇ理由なんじゃね?暗殺者の顔が凄い好みだったとか…」

「おいアリューシャ…。ふざけるな」

「ご、ごめんって…。そんな怒るなよルル公」

ふざけて良い状況じゃねぇだろ。

…なんて、アリューシャに八つ当たりしても仕方ない。

事実は変わらない。俺はルレイアを守ってやれなかった。それだけだ。

…自分の不甲斐なさに、死ぬほど腹が立つ。

「…ルルシー。暴走しちゃ駄目だよ。気持ちは分かるけど…こんなときだからこそ、君が冷静でいなきゃ」

またしてもアイズが、俺の内心を見透かしてそう忠告した。

…ったく、さすがは『青薔薇連合会』の次期首領。敵わないな。

「大丈夫だ。独断専行はしないよ…。ルレイアが起きたとき、傍にいてやりたいからな」

「そうそう。ルル公の良いところは、こういうとき見境なく暴走しないところだよな」

「ルルシーが暗殺されかけたときのルレイア、凄かったものね」

「正に暴走機関車だったわよね。迂闊に止めようとしたら轢き殺されてたわ」

うふふ、と微笑むアシュトーリアさん。笑うところではない。

そういうとき暴走して、結果上手いこと行くのは…ルレイアの最大の長所ではなかろうか。

でも、暴走したくなる気持ちも分かる。

ルレイアが傷つけられて、黙っているなんて…俺には、そんなこと。

そう思ったとき。

「会議中、失礼します」

「…ルヴィア?」

控えめなノックの後に、俺の部下のルヴィアが、神妙な顔をして会議室に入ってきた。

「どうしたんだ?」

「ルルシーさん宛に…これが届いていて。すぐ皆さんに見せた方が良いと思ったので」

ルヴィアは、黒い封筒を差し出した。

…何なんだ?これは。

「何それ…?」

「黒い封筒って…なんだか不気味ね」

ルレイアは…好きそうだけどな。

なんて、冗談を言っている場合ではない。

俺は封筒を開け、その中に入っていたカードを取り出した。

そこには。

「…!?」

そこに書かれていた文章に、俺は驚愕した。
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