The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
「…」

「…」

…何が、嬉しくて。

ルレイアを撃った男と、仲良くキッチンに並ばなくてはならないのか。

しかし、ルリシヤは全く気にしていない様子。

「…」

別に手伝ってもらいたくないとか、点数稼ぎのつもりかとか、色々言いたいことはあったが。

どれを言っても、子供じみた駄々を捏ねているような気がして。

「…じゃあ、スープ作ってくれるか。そこの…野菜使って良いから」

「分かりました」

我ながら何を言ってんだ、とは思ったけども。

まぁ…本人が手伝うと言うのだから、好きにやらせてやれば良い。

と言うか、こいつ料理なんて出来るのか。

「ちょっと包丁借りますね」

「あぁ…うん」

…ん?元暗殺者に包丁なんか持たせて大丈夫なのか?

まさか後ろから刺したりはしないだろうな…と、俺は気が気じゃなかったが。

ルリシヤは俺の心配を鼻で笑うように、平然と野菜を切っていた。

しかも。

「…!?」

ルリシヤの手元を見て、俺は愕然とした。

…何だ?それは。

「…?どうかしました?ルルシー先輩」

ルルシー先輩だと?

何だ、その気安い呼び方は。

いや、今はそれより気になることが。

「何なんだ…?その切り方は」

「え?あぁ…これですか?飾り切りですよ」

ルリシヤは、桜の形をしたニンジンを見せてくれた。

…どうなってるんだ?これ。

桜の花びらはまだ分かる。

「この…蝶々とか…どうなってるんだ」

蝶々型のニンジン。初めて見たぞ。

こんな切り方があるのか。

「アリューシャ先輩、ニンジンが苦手だって言ってたでしょう?だから、飾り切りして見た目を可愛くしたら、食べられるかと思って」

「…!」

「他の野菜も食べやすいサイズに切って、くたくたになるまで煮て青臭さをなくしたら、食べやすいと思います。それと、スープに入れる鶏団子にも、微塵切りにしたネギと生姜を混ぜて、少しでも野菜を多目に取れるようにしてみます。…駄目ですか?」

こ、こいつ…。

…もしかして、俺より料理出来るのでは?

「…別に駄目じゃないよ。好きにすれば…」

「ありがとうございます」

…なんて奴だ。

俺も料理に関しては少々覚えがあるつもりだったが…。

俺、こんな飾り切りなんて出来んぞ。

アリューシャの野菜嫌いだって…少しでも克服出来るように頑張ってきたつもりだけど…。

「…」

文句の付け所がない、ルリシヤの包丁捌きを見ていると。

もやもやしたものが、胸のうちから沸いて出てくる。

包丁捌きだけではない。調理過程の全てが手慣れていて、おまけに丁寧だった。

一体、何処でそんな技術を。

お前、マフィアだろうが。マフィアが料理なんてするのか。

いや、俺もマフィアなんだけど。

結局、ルリシヤは野菜スープに加えて、副菜としてオムレツまで作り上げた。

こいつの、この手際の良さと手先の器用さは何なのか。

逆に怪しいぞ。
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