The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
やがて歓迎会が終わり、ルリシヤとアリューシャとアイズが帰り、ルレイアが酔い潰れて(勝手に)俺のベッドで眠り始めた。

俺のベッドで寝るな。自分家で寝ろ。

とはいえ、またルレイアを蹴り出したら、あの夜みたいなことが起きるかもしれない。

そう思うと、帰れとは言えなかった。

さて、残るは一人。

「シュノ…。大丈夫か?」

「うー…」

シュノは顔を真っ赤にして、ワイングラス片手に机に突っ伏していた。

…こっちも相当酔ってるな。

シュノがこんなに酔っ払うなんて珍しい。これは多分…やけ酒、って奴だな。

その気持ちはよく分かる。

「ほら、シュノ…。もうやめとけ。水飲むか?」

「…あの人の…何処が良いの…?」

「うん?」

今、何て?

シュノは半分べそをかきながら、おつまみのカシューナッツを指先で転がした。

「あの人の何処がそんなに良いの?あんなの、ただの変態じゃない」

「へっ…」

思わず、ずるっ、とずっこけそうになった。

まさかシュノの口から、そんな言葉を聞く日が来るとは。

「だって、気取った仮面なんかつけて。真っ黒の服なんか着て。変なの。変態よ、変態」

「まぁ…そうだな」

仮面は弁解の余地がないが、黒い服はお前の大好きなルレイアも着てるぞ?

何ならルレイアに勧められて、シュノも黒い服着るようになったよな?

「あれの何が良くて、ルレイアはあれにお熱なの?」

あれ呼ばわりだもんなぁ。シュノも相当思うところがあるようだ。

「お熱かは知らないが…顔が好みだとは言ってたな」

「顔?あんな顔の何処が良いの…。ルレイアは仮面が好きなの?私も仮面をつけたら、ルレイアに好きになってもらえるの?」

「…どうかな…」

長年あいつと一緒にいるが、仮面フェチではないと思うんだけどな。

「そりゃ、ご飯は美味しかったけど…」

…美味しかったな。確かに。

それは認めざるを得ない。

「でもそれだけじゃない。あんなの変態だし、信用出来ないわ。私、あの人嫌い」

「そうか…同感だな」

「アイズやアリューシャは、何であんなのを信用出来るの?」

「何でだろうな…」

アイズは元々懐が広いし…アリューシャは馬鹿だからなぁ。

難しいこと勘繰って、あれこれ心配したりしないんだろう。

全く無警戒って訳ではないと思うが。

「でも、でもルレイアがあんなに気に入ってるってことは、きっと悪い人じゃないのよ。それも分かるの」

「…」

「だから辛いの。ルレイアを信じてあげたいから、ルリシヤも信じてあげたいけど、でも出来ないの。きっとルリシヤも悪い人じゃないのに…」

「…そうだな」

ルレイアを信用しているが故に…ルリシヤを信用してあげたいけど、でもそれが出来ない。

俺達が本当に辛いのは、そこなんだよな。

「好きな人を信じて、好きな人のお友達と仲良くしてあげられないのよ。私、嫌な女の子だわ…」

「そんなことはない…。俺だって同じだよ」

信じてあげたいと思ってるぶん…シュノの方が優しいよ。

俺の心の狭さと比べたら。

「…ねぇ、ルルシー」

「うん?」

「私、明日から…仮面つける」

「!?」

シュノさん、あなた今何て?

シュノは顔を上げて、鼻を啜った。

「ルルシーも一緒につけましょ。そうしたらルレイアが帰ってきてくれるわ」

「え、そ…それは…どうなんだろう…?」

ルレイアは別に…仮面フェチって訳じゃないと思うんだけど?

シュノ…お前、めちゃくちゃ酔っ払ってるな。今日はもう寝た方が良い。

「私も仮面つける~…」

「はいはい…」

とりあえず帰らせようと、俺はシュノの為にタクシーを呼んだ。

明日、シュノが仮面をつけて現れないことを祈る。
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