The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
ヴァルタがうちに来ようと来るまいと、俺としてはどちらでも良いが。

「とにかく、革命に協力して欲しいとのお願いは却下させて頂きます。あなたが今すぐ『青薔薇解放戦線』を裏切り、こちらに寝返ると言うなら、そうしてもらっても構いませんが?」

「いや、それは断る。一応あれでも、うちのリーダーには恩があるからな。返せるうちはその恩を返す。革命軍がにっちもさっちも行かなくなったら、迷わず切り捨てて逃げるがな」

成程。彼女はつまり、自分の志と言うよりは、ビジネスとして革命軍に参加している訳だ。

会社が給料を払い続けてくれるなら力を貸すが、給料を払えなくなった場合はすっぱり転職するつもり、と。

実に正しい生き方だな、それは。

「『青薔薇連合会』の意思は了解した。私はこのことをリーダーに報告しに戻る」

ヴァルタはそう言って、くるりと踵を返した。

俺達が協力しないという決定を下した限りは、これ以上彼女と話すことはない。

そして俺達も、彼女を帰さない訳にはいかなかった。

『青薔薇連合会』を騙してうちに加入したとはいえ…彼女は結局のところ、商談の交渉に来ただけなのだ。

俺達がその交渉を断っただけのこと。

営業に来たビジネスマンを、交渉決裂したからと言って殺す訳にはいかない。

無事に、『解放戦線』とやらに帰さなければならない。

だが、この件は…俺達としても、穏やかではいられない。

「…ルルシー。すぐに準幹部以上の人間を召集してください。アシュトーリアさんには、俺から報告します。確か今、彼女は…」

「アイズとお買い物に行くの、とか言ってたっけか…」

呆れたように嘆息するルルシー。

アシュトーリアさんには悪いが、可愛い愛息子とのショッピングは中断せざるを得ないな。

今回のこと、俺達としても…単なる傍観者ではいられまい。
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