The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
新入団員が入ってきてから、数日たったある晩。




俺はその夜、自分の執務室で仕事に励んでいた。

そこに、彼女が訪ねてきた。

…最初、部屋をノックされたとき、俺は驚いた。

こんな夜遅くに、誰が、何の用で訪ねてきたのかと。

もしかして、何か一大事があったのだろうか。

思わず立ち上がりかけたところ、執務室の扉が開けられた。

現れた人物に、俺は見覚えがなかった。

「…夜分に失礼致します。隊長殿」

「…誰だ?」

帝国騎士の制服に身を包んでいるのだから、帝国騎士なのは確かだろうが。

一体、何者なのだ?

「私は…先日入団した、四番隊の帝国騎士です」

「…新入りか?」

「そうです」

「…」

新入り。成程…俺の記憶にない訳だ。

自分の隊の人間なら、大抵は覚えているが…数日前入ってきたばかりなのだから、覚えていないのは当然だ。

「…その新入りが、何の用だ?」

それも、こんな時間に。

アポイントもなく。

「夜分に申し訳ありません。アポイントメントを取ろうにも…私のような新参者に会う時間など、作っては頂けないと思いまして」

…だから、ルールを破って夜中に抜け出してきた、と?

アポもなしに、こんな時間に隊長たる俺に会いに来るなんて…懲罰刑ものだが。

「…どうやら、そうせざるを得ない理由があるようだ」

彼女の、真に迫った目。

俺はその目を、無視することが出来なかった。

「…君は、一体何者だ?」

「…私は…」

彼女は少し俯いて、それからゆっくりと顔を上げた。

「…私は、ラシュナ・エルーシア。『青薔薇解放戦線』のメンバーです」

「『青薔薇解放戦線』…?」

そんな名前の組織は、聞いたことがなかった。

もしかして、あの『青薔薇連合会』と何か関係があるのか?

そうだとしたら…俺は。

しかし『青薔薇解放戦線』は、俺が忌むマフィアとは、全く別物であった。

「『青薔薇解放戦線』は…箱庭帝国革命軍の総称です」

「…何だと…!?」

そんなことは、予想だにしなかった。

…箱庭帝国革命軍?

箱庭帝国の名前は、俺だって知っている。

つい先日、かの国から追放されてきたマフィアと一悶着あったばかりなのだから。

でも…でも、今回は違う。

マフィアじゃない。革命軍。

革命軍など、ルティス帝国には全く縁のない代物だ。

その代わりに、我が国にはマフィアなんて組織が存在するが…。

それにしたって、革命軍など。

どうにも時代錯誤のように感じてしまう。現代社会で、未だにそんなものが必要になるとは。

あの国なら…仕方ない、と言えなくもないが…。

「…貴殿が、その革命軍…『青薔薇解放戦線』のメンバーだと?」

「そうです」

…こんな若い女性が。

国の圧政の為に、武器を手に取るとは。

そんなことをしなければならない国に生まれてしまった、彼女達の過酷な運命を思うと…可哀想、なんて言葉では言い表せない。

正義の為されない国では、革命という手段もやむを得ないのかもしれない。
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