The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
それで、その革命軍のメンバーが。

一体、俺に何の用なのか。

「…俺に何を言いに来た?」

わざわざ帝国騎士団に潜入してきて…俺に接触してきた理由が知りたい。

「頼みがあるんです」

「頼み…?」

俺に?それとも…。

「帝国騎士団に…我々『青薔薇解放戦線』の後ろ楯になって頂きたいのです」

「…」

ラシュナの、この申し出に…俺は思わず、言葉を失ってしまった。

これがもし、『青薔薇連合会』の彼であったら…きっと、顔色一つ変えないのだろうに。

俺は、愕然としてしまった。

…まさか、そんな。

「…後ろ楯に…?我々が?」

「そうです。私達だけでは…革命軍はあまりにも戦力不足です。人員も、物資も、資金も足りていません。だからこそ…私達を支援してくれる強力な後ろ楯が必要なんです」

それが、俺達だと?

確かに…帝国騎士団なら、彼女達にとっては頼れる後ろ楯であることだろう。

しかし…。それは、あまりにも…。

「…」

俺は俯いて、黙り込んでしまった。

少なくともこれは、俺の一存だけで決めて良いことではなかった。

「お願いします。私達は…私達は、正義を為さねばならないのです」

ラシュナは、真摯な眼差しで俺を見つめた。

その眼差しに、俺は思わず気圧されてしまいそうになった。

…昔の自分と、同じ目をしていると思った。

この国に、正しい正義があると信じていた頃の…。

「私の祖国は…本当に酷い。罪もない人間が、何人も国によって使い潰されて死んでいきます。生活は貧しく、病気になっても治療も出来ない。生まれてきても、大人になれない子供達がどれほどいることか…」

「…」

学校の、地理の授業で習った内容とは、全く違っていた。

あのときも、酷い国だと思った。

でも今は違う。ラシュナという…本物の箱庭帝国出身者の口から語られる言葉には…重い説得力があった。

「あの国を変える…。憲兵局の圧政から、国民を解放したい。誰かがやらなければならないのです。正義の為に」

「…!」

まるで…過去の自分を見ているかのようだった。

そうだ。その気持ちはよく分かる。

俺だって、その志のもとに…悪を滅ぼし、正義を守る為に、帝国騎士団に入った。

でも…現実は。

「…」

正義を為す。それが、革命軍の志だと言うのなら。

俺が叶えることの出来なかった正義を、彼女達が為そうとしているのなら…。

…俺はどうしても、彼女に向かって首を横に振ることが出来なかった。
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