The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
翌日。

俺は先輩の隊長連に、昨晩ラシュナから聞いた話を伝えた。

箱庭帝国の革命軍が接触してきた、という一大事に、先輩達は俺と同様に驚いていたが…騎士団長であるオルタンス殿は、顔色一つ変えなかった。

相変わらず、何を考えているのか分からない人だ。

「…オルタンス殿。ご意見をお聞かせください」

「うん…?あぁ…」

オルタンス殿は…何と言うだろう。

全員が、オルタンス殿の口から発せられる言葉に耳を傾けた。

きっと俺には考え付かないような、深謀遠慮な、

「青薔薇…って、最近流行ってるのかな」

「…はい?」

オルタンス殿は、ふざけた様子も全くなく(そもそもこの人がふざけているところを見たことがない)、真顔でそう言った。

「多いだろう?色んなところで…。ルレイアとか…」

「お、オルタンス殿…?」

「縁起の良い名前なんだろうか。我々も、青薔薇帝国騎士団に改名した方が良いのか?」

あ…青薔薇帝国騎士団?

何なんだ、それは?

「…ご冗談…ですよね?」

「うん?別に…俺はふざけているつもりはないが」

「…」

…何を考えているのか…と思っていたら。

何も考えてないことが判明した。

「オルタンス殿…。ふざけている場合ではありません」

「だから、ふざけているつもりはないんだが…。確かに、厄介なことになったな」

「…」

…本気なのか、ふざけているだけなのか。

少しは真面目に考えてもらいたいものだ。

内心イライラしていると、そんな俺の心境を見透かしたように、オルタンス殿がこう聞いてきた。

「ルーシッド。お前はどう思う?」

「…俺、ですか?」

「あぁ。お前はどうすべきだと考える」

…俺は。

昨日、ラシュナにも言ったが…。

「…俺は、この話を受けるべきだと思います」

「…正義の為に?」

「はい。正義の為に」

正しい理のある者が救われ、悪は成敗されなければならない。

俺はその志のもとに、帝国騎士団に入った。

そしてかの国の悪は、間違いなく憲兵局だ。

俺は昨日、ラシュナから箱庭帝国の話を聞いた。

あの国は…本当に酷い。

「ルティス帝国の隣で、あれほど苦しんでいる国民がいる。俺達は…手を差し伸べなければならない」

見て見ぬ振りなど、出来ない。

彼らが決起しようとしているなら、それを助けるのが正義の帝国騎士団の務めだ。

俺は、そう信じている。

「違いますか。オルタンス殿」

「あぁ…。違わないな。お前の言うことはもっともだ。…道義的にはな」

「…」

予想通りではあるが。

オルタンス殿を含め、他の隊長達は…乗り気とは言えなかった。

「…隣の国のことなんて、俺達には関係ねぇ」

案の定、三番隊のアドルファス殿は、吐き捨てるようにそう言った。

…彼はきっと、そう言うだろうと思っていた。
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