The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
…夜が明ける頃には、逃げ延びた全ての革命軍の構成員が、ティターニア家の敷地に着いていた。

「大丈夫ですか、坊っちゃん…」

「…ユーレイリー…」

「全く…。ご無理をなさらぬようにと言ったではありませんか」

「平気だ、このくらい」

国境を越えるとき、憲兵局員が発砲した弾丸がカスってしまった。

でも、こんなのは大した傷ではない。

生きているのだから、大丈夫だ。

「俺の他に、怪我人は…?」

「百名ほど。全員、ティターニア家お抱えの医者に診てもらっています」

そうか。それなら安心だな。

でも。

「…死者は?」

「…正確な数はまだ確認出来ていませんが、十名は下らないかと…」

「…そうか」

逃げようとしているところを、何名かが憲兵局員に撃たれるのを見た。

誰一人欠けずに逃げ延びられたらそれが一番だった。

でも、そういう訳にはいかないのだ。

前を向かなくては。志半ばで散った仲間の為に。

「負傷者の治療を最優先してくれ。それから、彼に…」

会って、話さなくては…と思っていると。

「無事で何よりだ、ルアリス」

「…フランベルジュ殿」

こちらが向かう前に、向こうから来てくれた。

この革命において、ルティス帝国で一番始めの協力者。

フランベルジュ・アンフィトルテ・ティターニア。

ベルガモット王家の親戚筋で、ルティス帝国では非常に名のある貴族だと聞いている。

俺達が国境越えを敢行出来たのは、ひとえに彼のお陰だ。

「フランベルジュ殿…。セトナ様は、どちらに」

「ここに」

フランベルジュ殿の後ろから、今にも泣きそうな顔をしたセトナ様が駆け寄ってきた。

「ルアリスさん、お怪我を…」

「大丈夫です。あなたも無事で良かった」

セトナ様は、この革命の要。彼女の身に何かあったら大変だ。

「フランベルジュ殿…早速ですが、今後の方針について話し合いたいのですが」

「先に、少し休んだ方が良いのではないか?」

「いや…休んでいる暇はない。すぐに…」

俺がそう言いかけたとき。

「その体たらくで何を言うのじゃ、ルアリス」

「休めば良いじゃん…。面倒臭いし…」

二人の女性が、セトナ様の後ろから現れた。

この二人は、『青薔薇解放戦線』のメンバー。

「ミルミル…。それに、ヴィニアス」

「そんな寝不足貧血の酷い顔の男が、革命軍のリーダーとは。情けないのう」

「…うぐ…」

ミルミルの言う通り、ではあるけど…。

言い返す言葉もないけれど。でも。

「俺がしっかりしなくちゃ…皆の為にも」

「そう思うなら、余計にちゃんと休め。そんな様子じゃ、憲兵局にやられる前に寝不足で倒れるぞ」

「…」

おっしゃる通り。

更に。

「そんなに真面目にやらなくて良いじゃん。とりあえず脱出出来てホッとしたところなんだからさ」

何でそんなに真面目にするの?と言わんばかりのヴィニアス。

ヴィニアスは…もう少し真面目になるべきだと思うけど。

でも彼女達の言うことは、実にもっともなので。

「…分かった。フランベルジュ殿…少し休ませてもらっても良いでしょうか」

「あぁ。その方が良い」

少し寝て、起きたら…改めて話し合うとしよう。
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