The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
──────あれは、今からおよそ三年近く前のことだった。




その日俺は、特別に憲兵局に許可を取って、国境を越え、ルティス帝国に入国していた。

勿論、合法的に入国した訳ではない。

父の名前を使って、憲兵局と、国境検問所両方に多額の賄賂を送って、物を言わせたのだ。

本当は、こんなやり方はしたくなかった。

でも、俺が国境を越えるにはこうするしかなかったのだ。

そして、そこまでして…俺が国境を越えた理由は、ただ一つ。

革命の協力者をスカウトする為だ。

「…フランベルジュ・アンフィトルテ・ティターニア…か」

彼から送られてきた手紙を読み直しながら、俺は再度、その名前を呟いた。

フランベルジュ殿のことを最初に知ったのは、その半年前。

きっかけは、とある噂だった。

ルティス帝国の国境を越えた近くに、脱国者を受け入れてくれる貴族が住んでいる…と。

最初は、単なる作り話だろうと思っていた。

しかし、実際にその貴族に保護してもらったという脱国者の話をいくつか聞き。

これはもしかして、本当なのではないかと思うようになった。

そして、その噂が本当なのだとしたら…俺の協力者になってくれるかもしれない。

虫が良過ぎるとは思ったが、俺には是が非でも、国外に協力者が必要だった。

国内で革命を行うには、無理がある。

国外から俺達の革命を支援してくれる、強力な後ろ楯が要る。

出来ることなら、帝国騎士団が望ましい。

でもその帝国騎士団にコンタクトを取る為には、橋渡しとなってくれる存在が必要だ。

もし本当に、国境近くに親箱庭帝国の貴族がいるなら…この上なくうってつけの人材だ。

そう思った俺は、脱国者のつてを辿って、フランベルジュ殿の名前と住所をなんとか探り当て。

彼に、手紙を送った。

勿論これも、各機関に賄賂を送ってようやく届けられたものだ。

手紙の内容は、ごく簡潔であった。

『革命を起こそうと思っている。協力して欲しい』。要約すればこんな内容だ。

憲兵局に見つかったら、一発でアウトな手紙だった。

危険を承知で、俺はその手紙を送った。

返事が来れば良いが。

恐らく、無視されるだろう。

革命に協力するなんて、そんな危険極まりないことを誰がするものか。

そう思っていた。

でも、あるいは。もしくは。

僅かな希望がそこにあるなら、諦めたくはない。

俺の思いが通じたのだろうか。

驚いたことに、二月ほど後、手紙の返事が返ってきた。

それが、今俺が手元に持っている手紙だ。

返ってきた手紙に書いてあった内容。その真偽を確かめる為に…俺は危険を承知で、国境を越え、彼に会いに来た。
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