レンアイゴッコ(仮)
ふと、曲がり角でばったり出会う長身。私に影を落とすのは今会いたくない人物ナンバーワンである、東雲琥珀だ。
会釈してやり過ごそうとしていれば「妃立」と呼び止められ、動かしていた足はピタリと静止した。
「さっきのだけど」
「(……さっきの?)」
頭によぎるのはあの女性社員とのやり取り。
モヤモヤとした濁りがみぞおち辺りに復活して膨張しようとする。それを我慢するために、頬にむっと溜め込んだ。
「しらない」
「……は?」
「私、仕事に戻るので」
「待って、妃立」
私へと伸ばす、東雲のその手を振り払った。
パチンと乾いた音が、私たちの間で響く。
可愛くない。いくら外見を可愛くみせても、中身が釣り合っていなければ、結局可愛くないな自分が完成されるだけ。それをわかっているのに、自分の意思とは裏腹に、上手に伝えられない自分が嫌になる。
「職場で必要以上の接触はやめてください」
自分勝手に言い放ち、東雲から背を向けた。それ以降、一度でも東雲の顔を見ることが出来なかった。