レンアイゴッコ(仮)
自分でも初めて知った。東雲の許容範囲が100あるとして、私はきっと、10にも満たない。

ぐりぐりしていた額を離すと、東雲の手も首を持ち上げた。

「ねえ、なんで怒ってたの」

「聞いても楽しくないよ」

「気を付けるから、今後のために教えて」

ほら、円満な付き合いを心がけてくれる東雲は私よりずっと心が広い。

それを打ち明けていいのか、足踏みしてしまう。

「(いや、多分)」

「私、心がものすご〜く狭いみたい」

打ち明けなきゃだめだ。

「狭くて別に良いんじゃね」

だって、言わなきゃ何も伝わらない。

「駄目だよ。だって私、困ってるの。東雲のせいで困ってるの」

「何に困るわけ」

「東雲の恋愛を応援するって言ったのに、ちぐはぐなのはわかってるんだけど」

おそらく東雲にこんなことを言うのは間違ってる。
ぶつけていい相手じゃないこともわかる。けど、今はもう抑えられない。

「東雲が他の子に優しくするの、やだ」

「……やだ?」

「職場で必要以上に接触しないでって言ったけど、あれは私じゃなくて、ほかの女の子に触って欲しくない、だけで……」

東雲の服を掴む手が緊張で震えた。心臓がうるさい。


「わ……私もたまにはよしよししてよ!」


あの女性社員を意識しすぎて、突拍子のない要求が口から零れてしまった。
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