レンアイゴッコ(仮)
「……よしよし?」

ほら、思った通り東雲も困惑している。
勢いが消失してしまって、ゆるゆると視線を落とす。

お強請り、思っていたよりもずっと恥ずかしい。もう絶対やらない。

「……ごめん、なんか間違えた」

「何を間違えるの」

「(何を……)」

頭の中を整理すると、かなり大胆且つ踏み込んだ発言が点在していることに気づく。

『なんでだろ』

先程の独り言が思い出された。

『なんでだろうね』

佐々木さんの、企んだような笑みも。

──……もしかして、忘れかけていたこのモヤモヤって……


「……やきもち?」


脳裏を過ぎったワードをずばりと言い当てられ、ドキン!と心臓が驚いた音を鳴らした。

「ちがう!」

見抜かれた気持ちは、隠す一択である。
真上で空気みたいな笑い声が聞こえた。

穴があったら隠れたい。
隠れることは不可能なので、東雲の顔を見れない。

「妃立」

「違うってば」

「妃立柑花」

「もう、うるさ……」

「柑花」

心地よい低音が私の名前を丁寧に紡ぐと、ぽんと頭に手を置かれて、そのままゆるりと撫でられる。

うれしい。

東雲に名前を呼ばれると嬉しい。
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