レンアイゴッコ(仮)
「(危なかった……!)」

何はともあれ、莇さんのおかげであの空気を回避出来た。

「(まだ顔熱い……)」

よしよしの過剰摂取は危険である。

東雲の部屋はいつも通りの殺風景……ではなく、見慣れたロゴのダンボール箱が難民のように散らばっていた。いつも綺麗な状態なのに、違和感だ。

「今日、荷物多いね」

その異変に思わずポツリと呟いた。失礼かな、と思いながら、聞かずにはいられなかったのだ。

「お詫び、何がいいか分かんないから適当に買った」

私の疑問を東雲はすぐに拾った。しかし、かなりの爆弾発言である。

「お詫びって何、まさか仕事でやらかしたの?」

「違う。全部妃立への貢物だから開けていいよ」

東雲爆弾、一体いくつ仕込まれている?

「はい!?」

聞き間違えだと思った。

「全部。靴とか服飾品とかは良くわかんねえから、くしとか、マグカップとか……あとはあの辺全部酒」

ほっそりとした長い指は箱を指さしながら当たり前に私をなぞるので、驚きとともに申し訳なさが生まれる。

「ごめん……なんか申し訳ない」

何も考えずに怒った自分の勝手さに反吐が出る。

「謝罪の成功確率を俺が勝手に上げようとしただけだし、それに」

しばらく言葉を溜めた東雲は、気まずそうに。

「超遅いけど、誕生日プレゼントってことで」

と、私の心を重くさせていた、申し訳ないって気持ちを掬い上げた。

「じゃあ、開ける」

「助かる」

ほらね、また東雲の些細な一言が、私の心を軽くする。
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