レンアイゴッコ(仮)
「派遣の苑田さん、やり手ね」

坂下先輩も同意見らしい。

少し遅れて休憩室へ行くと、運良く坂下先輩を見つけたので、同じテーブルで休憩を取る事にした。

「坂下先輩もそう思います?」

「思う。この分だと納品も間に合いそうだし、良かったわね」

「はい!」

鈴木にはなんの不安もなくしっかりと療養させたいし、頑張らないと……!!

「おつかれっす」

意気込んでいると、やる気のない声が背中をたたいた。起伏のないこの声は東雲のものだ。

「東雲、最近休憩室の利用頻度高くない?」

「普通です」

しかし今日はいつも以上に声が疲れている気がする。どうせコーヒーだけだろうし、

「東雲、ブラックだよね。すっごく美味しいの作るから、座ってて!あとこのパン美味しかったから食べてみて」

「妃立の昼ごはんだろ」

「美味しいものはシェアしたくなるの」

東雲の反対意見を聞く前に立ち上がり、エスプレッソマシンへと向かった。

疲れているなら、少しお砂糖を入れてもいいかな……?

美味しいものをと言ったものの、何を持って美味しいのか分からず悩んでいれば、ドアの開閉音が聞こえた。視線を左にスライドさせると、そこに居たのは苑田さんだった。休憩するのだろう。

何も気にすることも無く、とくとくと注がれるコーヒーへと視線を戻した私の鼓膜に、思いもよらない、衛星がぶつかる。


「あ、いたいた琥珀」
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