レンアイゴッコ(仮)
「(……………………琥珀?????)」
エスプレッソマシンからドリップ完了の音が聞こえた。けれども、視線は苑田さんへの引力に勝てなかった。
激しく動揺しているのがわかる。東雲は堅い無表情を崩さない。
「じゃなくて、東雲さんちょっといいですか?」
「嫌です」
「(琥珀って言った?今、名前呼びしたよね?何で?)」
目が点になるとはこのことか、私の脳内はまばたきのあいだに率直な疑問で埋め尽くされた。
「その釣れない感じ、現役なのね。大学の同窓会も全然出ないし、連絡も返さないし、生きてるのかって話してたよ」
「そー。生存確認出来て良かったな」
「みんなに共有する。ところで発注先の件で質問なんだけどさ……」
「(同じ大学なの?初耳なんだけど、ていうか何も言わなかったよね?普通にしてたよね?そうだったよね?)」
「妃立、顔が怖いわよ」
悶々と考えていると、コーヒーを注ぎに来たらしい坂下先輩に指摘されてしまった。表情筋を柔らかくさせて、コーヒーのカップを手にした。
「そ、そんなことないですよ!……っ熱っ!」
しかし慌てすぎたせいか指にコーヒーが零れてしまった。指先がじんわりと痺れる。
「やだ、何してんの!?」
坂下先輩の声とほぼ同時に手を取られた。
冷たいその体温を私は知っている。
「平気?」
無機質故に透明感が際立つその瞳が揺れている。
「……ぃき」
「私、氷貰ってきますね」
「だ、大丈夫!勝手に……」
苑田さんは私の答えを聞かずに休憩室を出てしまった。
エスプレッソマシンからドリップ完了の音が聞こえた。けれども、視線は苑田さんへの引力に勝てなかった。
激しく動揺しているのがわかる。東雲は堅い無表情を崩さない。
「じゃなくて、東雲さんちょっといいですか?」
「嫌です」
「(琥珀って言った?今、名前呼びしたよね?何で?)」
目が点になるとはこのことか、私の脳内はまばたきのあいだに率直な疑問で埋め尽くされた。
「その釣れない感じ、現役なのね。大学の同窓会も全然出ないし、連絡も返さないし、生きてるのかって話してたよ」
「そー。生存確認出来て良かったな」
「みんなに共有する。ところで発注先の件で質問なんだけどさ……」
「(同じ大学なの?初耳なんだけど、ていうか何も言わなかったよね?普通にしてたよね?そうだったよね?)」
「妃立、顔が怖いわよ」
悶々と考えていると、コーヒーを注ぎに来たらしい坂下先輩に指摘されてしまった。表情筋を柔らかくさせて、コーヒーのカップを手にした。
「そ、そんなことないですよ!……っ熱っ!」
しかし慌てすぎたせいか指にコーヒーが零れてしまった。指先がじんわりと痺れる。
「やだ、何してんの!?」
坂下先輩の声とほぼ同時に手を取られた。
冷たいその体温を私は知っている。
「平気?」
無機質故に透明感が際立つその瞳が揺れている。
「……ぃき」
「私、氷貰ってきますね」
「だ、大丈夫!勝手に……」
苑田さんは私の答えを聞かずに休憩室を出てしまった。