レンアイゴッコ(仮)
私が知りたいのは見た目よりも、別の場所にある。

──……東雲のことが知りたい。

大学では何を専攻していたのか、友達とはどんな話をしていたのか。

バイトの種類も、休みの日の過ごし方も、どんな人と、どんな恋愛をしていたのかも、東雲を作る過去が知りたい。

空っぽだったタンクをいつの間にか東雲琥珀が占領している。最初は東雲のタンクを満たしてあげようと思った。いつの間にか別になっていた。

手のひらを返すと、私の指先を支える東雲の指を掴んだ。


「……私だって、まだ、一回しか呼んだことないのに……」


何処に落とし込んで良いのか分からない感情を吐き出すと、東雲の双眸が開かれる。

「…………は?」

失言に気づく。

「なんでもない!心配してくれてありがとう。苑田さんに、大丈夫だって伝えてくるね!」

──「(何を口走ってるんだ……!)」

恥ずかしさのあまり、強引に背を向けた。

「待て」

それを東雲は許さない。
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