レンアイゴッコ(仮)
繋がったままだけど、指先だけゆえに簡単に離れると踏んだその手は離れることはなく、むしろ、強く握られた。

「まだ話は終わってない」

職場なのに、遮るものは無いのに。引き離さなきゃいけないのに、東雲の引力に抗えない。

「お前の大丈夫は信用ならないんだわ」

いつも難しい顔をしているその顔が緩んで、困惑したように悲しい笑みを浮かべられていた。


どこに落として良いのか分からない感情が一つあった。ううん、一つだけだと思ってたの。それはいつの間にか二つに分かれて、私を度々困らせている。

同期で居ようと思うお利口な私と、もう少し踏み込みたい我儘な私。

お利口な方がみんな好きに決まってる。だからそう在ろうとした。けれど、我儘な私が心を狭くさせるの。

職場では今までの関係で、って言ったのは私なのに。

どれも、私の一部なのに上手に折りたたむことも出来ず、捨てることもぐちゃぐちゃに丸めることも出来ず、ただ私の中に存在している。

……何度か心の中で練習して、息を飲む。


「………………こは、」
「氷、持ってきました〜っ!間に合いました!?」


出しかけた声は別の声に飲み込まれると同時、慌てて身体を離した。苑田さんだった。
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