レンアイゴッコ(仮)
実りも、夢も、希望も、未来もない。

何も生まれない。生まれても意味が無い。

そう。無意味な時間を潰しているだけ。

「で、柑花は何に悩んでるの?」

桜雪の言葉に、視線を左にスライドさせた。

二人に強がりは無意味だ。

「……今日、職場に派遣の女の人が来たんだけど」

「うん」

「東雲と同じ大学の人だったんだけど」

「へえ、やりやすくていいじゃん」

「東雲はやりやすいかもだけど、急にやりにくくなっちゃって」

ポロッと気持ちを零したその時「彼女と仕事することが俺はやりにくい」と、絃葉が身も蓋もないことを言うと「だよねー!私も無理」と、桜雪も同調するから、憤りを手の中で握りしめて「もう!!」と吐き出せば、二人はケラケラと笑った。

「ねえ、女って言っても大学の友達でしょ?元カノでも一夜の過ちな関係でもないんでしょ?彼氏とそんなに親しくしてたの?」

桜雪の質問に、今日の光景を巻き戻し「親しいわけじゃ……」と、言葉を噤んだ。

「つか、関係を柑花に言ってないだけかも」

「有り得る」

「もう!!!」

二人は私の不安を煽る。面白がって。

「あは、何も無いって、それは嘘ね。柑花、ハマってるじゃない。悩んでいる時点で、そこに実りはあるのよ」

「…………ちがうもん……」

「あーあ、意地っ張り。大学の友達にヤキモチ妬いてる時点で相当よ」

「……」

見抜かれて黙る。これは必然。あらぬこと、不都合なこと。自分をさらけ出すことは、弱くなることに直結する。

「てか、東雲って聞くとあいつ思い出すわ」

ふと、絃葉が呟いた。
< 162 / 251 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop