レンアイゴッコ(仮)
鈴木のことも気になるけれど、もっと別に気になってしまった。

「東雲、怒ってたの?」

滅多なことで感情を表に出さない東雲が絶対に合わせないって言い切っていた鈴木に、怒ったことも気になる。
鈴木は静かに頷いた。

「はい。お前が倒れたら、妃立が自分に負い目を感じるだろって。だからちゃんと言えって。妃立さんは俺の事、ちゃんと見てくれてるからって言われました」

盲点だった。

「……私が?」

自分の言葉で叱っていると思っていたのに、東雲は私の意を汲んでくれていたのだ。

それに、鈴木のことをフォローしているように見えて、それじゃあ、東雲が私のことを見ているといっているようなものだ。


「ねえ妃立さん。俺気づいちゃったんですけど……妃立さんと東雲さんって……」

ほら、現ににやにやとしたり顔の鈴木が、手でハートを作っている。まさか、病室で東雲とのことを言及されるとは。

……逃げなくては。

「……は……、はあ!?な……何言ってんの!あ、そうだ、これお土産!冷蔵庫に入れておくね!」

ガサッとビニール袋を翳して、冷蔵庫らしき棚を開けようとした。

「あ……妃立さん、そこ」

しかし戸を開けるとそこには鈴木の私物……肌着類が畳まれていた。

「きゃあ!ここ、クローゼットじゃないの!」

「自分でするんで、そこに置いてて良いですよ……」

私の失態を見て笑い混じりの鈴木は「いてて、笑うと腹いてえ……」なんて悶えていた。
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