レンアイゴッコ(仮)
「うん、美味しい!」

チキンライス、ホワイトソース共に温めるだけまで完成させた。ちなみに、味付けは過去最高なのでかなり上機嫌。帰りにスーパーで相場よりも少々高い材料を揃えたからだ。

あとは東雲を待つだけ。

エプロンを外してテーブルに置き、窓際のソファーにコロンと寝転ぶと、ちょうどタイミングを見計らったようにスマホが震えた。東雲からのメッセージだった。

〈着いた〉

しかも、終わる時間ではなく、到着の時間を告げるタイプらしい。迷惑極まりない。

〈勝手に入って!〉

と、雑なメッセージを入れてエプロンを手に取った。

この時間だ。昼ごはんもほぼ抜いている東雲のことだ。お腹ぺこぺこのはずだから、はやくお腹を満たしてあげたかった。

卵を解きほぐしたころ、玄関で音がした。フライパンを温めていた火を止め音のなる方へ急ぐと、合鍵を使って入ったであろう東雲が玄関で靴を脱いでいた。

……あ、スリッパ出すの忘れてた。

「おかえり、これ使って!」

なんて、迂闊に言葉を使ってしまう。

「……おかえり?」

怪訝な声が落ちてきて、慌てた。

おかえり?おかえりなんて言った?……言った気がする。いや言ったわ。絶対言ったわ。私のバカ!

「ごめん、よく絃葉が家に来るから間違えちゃった」

「……絃葉」

東雲がポツリと呟いたけれど、今は絃葉のことよりも、東雲の方が大事である。
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