レンアイゴッコ(仮)
“異動はしない”って言った。私は東雲を信じる。
五年の付き合いだからこそ、東雲はそう簡単に嘘をつく男じゃないって知っている。
「(不安になるの、やめ)」
私の好きな人は、大事なことをちゃんと口で伝えてくれる人だ。
朝、目覚めていつの間にか繋がれた手を見つめながら決意を固めた。
東雲の異動の噂はすぐに鎮火しなかった。
「東雲さんが異動するの痛くなーい?」
「目の保養が……私のモチベが……」
「ていうか妃立さんどうするんだろうね」
「遠距離で続くと思う〜?」
「お互い、良い感じの人出来て別れそう」
「だね、別れるだろうね」
そればかりか、他部署の給湯室を通った時に女性たちの会話が聞こえてしまった。
「(知らないところでも付き合ってることバレてたんだ……!)」
短いため息を吐くと、コンコン、と壁を叩き「恐れ入ります」と、断りをいれた。三人とも、分かりやすいまでに、ぎょっと目を見開いた。
「立ち聞きごめんなさい。別れないし、異動もないから安心してくださ〜い」
「そ、そうなんですね……しつれいしました〜……」
「よろしくお願いしまーす」
笑顔でひらひらと手を翳したのち、もういちどため息。