レンアイゴッコ(仮)
東雲と付き合ってからの私は、そのほとんどが幸福で構成されている。しかし喜びと同時に存在する複雑な気持ちがある。

「ねえ、悩みがあるんだ」

「なに?」

「東雲と付き合ってから、私の恋愛相談の窓口がてんで少ないのよ」

東雲一人にその任をお願いしていたから、東雲と何かあった時に言える人が少なすぎる。坂下先輩だと気をつかっちゃうし……桜雪はあまり捕まらないし。

「ざまあ」

カタカタとパソコンを操作する、東雲の横顔が嘲笑う。バカにした口調にカチンと来ていると、東雲が目線だけこちらに向けた。


「俺に直接言うしかないってことだろ?」


言われて理解した。おそらくこれは策だ。言質を取ったわけじゃないけれど、東雲は入社初期のころから私のことが好きだと言った。

なのに、東雲は律儀に私の相談に乗っていた。私はおそらく、東雲琥珀という男によって囲われていたのだ。外堀を全部埋められたのだ。いつか、自分と付き合った時のために。性格が悪い。否、一途とも呼ぶ。

「東雲の手のひらの上ってことなのね」

「そういうこと」

腹立たしいのに、許せてしまうのも惚れた弱みってことか。
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