レンアイゴッコ(仮)


「妃立、まーた東雲に虐められてたじゃん。大丈夫?」

忘れていた意見書を提出すると、言い合いを見ていたらしい坂下先輩はこっそりと耳打ちした。

私と東雲の対立は制作3課内ではちょっとした名物となっていて、火花を散らす度に話題になる。

「ほんとですよ。" 差し替えておきましたんで"って報告してくれたら助かるのに」

「協調性がない男と付き合うのは苦労するわね」

坂下先輩は長い髪を払った。彼女は私が新人の頃、教育係としてお世話になって以来仕事のことも度々相談している先輩で、同僚の垣根を越えて、プライベートでも一緒にご飯に行く仲だ。

「……なんであんなに偉そうなんでしょうね」

「仕事が出来る人間は、チョット人間性に欠けていても、無表情でも、偉そうにしていても、組織の中では好かれちゃうんだな、これが」

確かに、真理である。

「でも、ムカつくものはムカつきます。一言相談してくれたら私も対応出来るのに、勝手なことをされると困ります」

ため息を落として、東雲が変更した企画書の書類に目を通した。相変わらず、非の打ち所がない企画書である。
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