レンアイゴッコ(仮)
東雲はこういう所がある。仕事が出来るのは大変素晴らしいと思うのだけど、他人を頼ることも覚えて欲しい。

デートくらい他の日にずらせばいい事だし、昨日も引き留めてくれれば浮気現場に出会すこともなかった。

「(いや、浮気は発覚して良かったじゃん)」

東雲が仕事人間で良かったわ。仕事ばかりの人間と付き合おうとは思わないけど。

「(いやいや、付き合ったんじゃん……!)」

脳内で一人、自問自答して頭を抱える。今考えても、いや、いつ考えても、あの時の私、やっぱり早まったんじゃないの……?

乱れた髪を軽く整えながら再度東雲を見遣れば、無愛想な視線とぶつかった。東雲の目が細まる。今の百面相をどうやら見られていたらしい。

女として終わってる。否、最初から女をほとんど見せていない。苦笑いで回避した。東雲は表情をピクリとも動かさない。

何となく、今日の東雲は機嫌が悪い気がする。触らぬ神に祟りなし、という空気だ。しかし、神をも恐れぬデザイナーの女性社員が東雲に声をかけるのを見届けて、仕事に取り掛かる。

ああ、やりづらい……。

東雲は気まずくないのか、甚だ疑問だ。そもそも、

「(なんで、付き合おうって言われたんだろ)」

東雲の考えは全くもって不明だ。
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