レンアイゴッコ(仮)
「そういう妃立は、家で着せ替え人形とかで遊ぶより、外で活発に遊んでそうだけどな」

「そうなの。私、かなりボーイッシュで、髪の毛もずっとショートだったよ」

自分の髪の毛先を肩あたりに当て「このくらい」とイメージさせてみると、こちらを一瞥した東雲は「へえ、ショート。似合いそう」と、社交辞令のように浅く頷いた。

「東雲はショートとロング、どっちが好き?」

「ロング」

即答だ。

「そっちのが、遊べるからな」

東雲はハンドルを握る左手の人差し指を立ててくるくると円を描く。

「(切ろうかな)」

信号待ちで、東雲がトントンと肘置きを叩く。釣られて見上げる。東雲はこちらを向いているから、目だけではなく、顔の正面から視線が交わる。

「切ろうかな、とか思っただろ」

「思った」

「短いのも見たいから、どっちにしろ俺得」

「(なんだ、それ)」

青信号で東雲の視線は進行方向へ向けられる。私もまた前を向く。顔が熱い。

私の事全肯定するつもりか。

……甘やかすつもりか。
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