レンアイゴッコ(仮)
結果的に、良くも悪くもノーダメージだと思われたらしい私の元へ、自分も動画を撮られたという後輩や同級生が現れた。自分で判断するのは難しい。学校に相談しても取り合ってくれないと聞き、警察よりも先に弁護士の父に相談した。もちろん私の件は伏せて。

父は簡単に問題をクリアした。どんな手を使ったかは知らないけれど。

「(東雲って、お父さんに似てるのかな)」

自暴自棄になりやすくて、学生の頃の貞操観念なんてあってないようなものだった。就職してからというもの、かなり強固に守られている。

環境が変わったから?それとも生活スタイルの変化?

『変な男に引っかかって、泣き付かれる俺の気持ちを考えろ』

──……振られる度に東雲に泣きついて、受け止めてくれていたから?

そもそも恋愛脳の私が、毎回" 最後 "を意識するようになったのも…………、



「ただいま」


過去と照合していれば、突然現実に引き戻された。数分前と変わらない東雲は私の目の前に立っていた。

「……おかえり」

「どうぞ」

東雲の手の中にはキーリングがあった。ふたつあった鍵は、彼の家の鍵だけが無くなっている。渡され、握りしめた。東雲が握っていたのだろう、受け取ったシルバーのそれは低体温な男の温もりが残されていた。
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