イケメン友達ドクターによる真夜中の診察は
「笑わないでよ、一般人はそんな知識ないわよ」
「悪い。慢性出血の場合もあるから本当に大丈夫なわけじゃないし、心配なら病院にかかるのは必要だよ。たぶん大丈夫だとは思ってたけど」

「メッセージで教えてくれたら良かったのに」
「心配だったから診たかったし」

「だったらもっとわかりやすく心配してくれない? ああほんと、今日はさんざん!」
「なにがあったの?」

「悲惨よ、悲惨! 朝は寝坊して遅刻ギリギリ、エレベーターに乗ったら大人気のイケメン営業さんに『カーディガン裏返し』って言われて、恥ずか死しそうだった! そのあとフロアに駆け込んだら滑って転んで頭を打って、課長には書類のミスで怒られて、あとでわかったんだけど実はほかの人のミスで、『なんで自分じゃないって言わないんだ』って二重で怒られて、お昼ごはんは目の前でランチが売り切れて友達には『恋人できた』って言われた!」

「大変だったね。最後のはなんか違う気がするけど」
 くすくすと彼は笑う。
「この歳で付き合うとなったらそのまま結婚でしょ? 最後の独身友達が!」
 私が両手で頭を抱えると、彼はさらに笑った。

「笑わないでよ! こっちは切実なんだから。ああ、結婚したい!」
「そのわりには婚活もなにもしてないじゃん」

「だって……」
 私にはその勇気がない。例えばアプリに登録して出会った人がいい人である保証なんてない。女性の体目当ての男性もたくさんいるというし、私に見極める目があるとも思えない。もっと言うなら、自然な形で出会って、好きになりたい。そんなの崖っぷちの人間が言うことじゃないのはわかってるけど。
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